【統計検定1級】統計応用・人文科学 2023年 問4【解答】

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解答

[1]

まず、男性の回帰式を\(\hat{y}_M=a_M+b_Mx\)とする。表1の\(x=5\), \(x=6\)に対応する予測値から、

\[ \begin{aligned} 7.2 &=a_M+5b_M \\ 7.8 &=a_M+6b_M \end{aligned} \]

を得る。第2式から第1式を引くと\(b_M=0.6\)であり、これを第1式に代入すると、

\[ a_M=7.2-5\times 0.6=4.2 \]

となる。

同様に、女性の回帰式を\(\hat{y}_F=a_F+b_Fx\)とすると、

\[ \begin{aligned} 6.6 &=a_F+5b_F \\ 7.2 &=a_F+6b_F \end{aligned} \]

より、

\[ b_F=0.6, \qquad a_F=6.6-5\times 0.6=3.6 \]

となる。したがって、回帰式は

\[ \text{男性:}\quad \hat y_M=4.2+0.6x \]

および

\[ \text{女性:}\quad \hat y_F=3.6+0.6x \]

である。両式の傾きは等しく、同じ労働時間では男性の平均賃金の予測値が女性より0.6千円高い。よって、同一労働時間で比較すると男女間に平均賃金の差が見られる。

[2]

まず、男性の平均労働時間は表1の(a)より

\[ \begin{aligned} \bar{x}_M &=5\times0.1+6\times0.15+7\times0.4+8\times0.35 \\ &=7.0 \end{aligned} \]

である。回帰分析では、切片を含む場合、予測値の平均は目的変数の平均に一致することが知られている。実際、残差を\(e_i=y_i-\hat y_i\)とすると\(\sum_{i=1}^n e_i=0\)であるから、

\[ \bar{y} =\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n y_i =\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n(\hat y_i+e_i) =\frac{1}{n}\sum_{i=1}^n\hat y_i =\bar{\hat y} \]

となる。したがって、

\[ \begin{aligned} \bar{y}_M &= 7.2 \times 0.1 + 7.8 \times 0.15 + 8.4 \times 0.4 + 9.0 \times 0.35 \\ &=8.4 \end{aligned} \]

となる。

同様に、女性については表1の(b)より

\[ \begin{aligned} \bar{x}_F &=5\times0.35+6\times0.4+7\times0.15+8\times0.1 \\ &=6.0 \end{aligned} \]

および

\[ \begin{aligned} \bar y_F &=6.6\times0.35+7.2\times0.4+7.8\times0.15+8.4\times0.1 \\ &=7.2 \end{aligned} \]

を得る。

よって、男女ごとの1時間当たりの賃金は

\[ \frac{\bar{y}_M}{\bar{x}_M}=\frac{8.4}{7.0}=1.2 \]

および

\[ \frac{\bar{y}_F}{\bar{x}_F}=\frac{7.2}{6.0}=1.2 \]

千円/時間である。この指標で比較すると、男女間に差は見られない。

[3]

賃金\(y\)から労働時間\(x\)を予測する回帰式を\(\hat{x}=c+dy\)とする。以下では、分散、共分散および残差分散を、すべて同じ分母\(n\)で定義した記述統計量として扱う。この回帰の傾きは

\[ d=\frac{s_{xy}}{s_y^2} \]

である。

表1の労働時間の分布から、男性では

\[ s_{x,M}^2 = (5-7)^2\times0.1+(6-7)^2\times0.15+(7-7)^2\times0.4+(8-7)^2\times0.35=0.9 \]

である。女性についても、

\[ s_{x,F}^2 =(5-6)^2\times0.35+(6-6)^2\times0.4+(7-6)^2\times0.15 +(8-6)^2\times0.1=0.9 \]

となる。

[1]で求めたように、\(y\)の\(x\)に対する回帰係数は男女とも\(b=0.6\)なので、共分散は

\[ s_{xy} = b s_x^2=0.6\times0.9=0.54 \]

である。また、予測値と残差の積和は0であるから、これより次が成り立つ。

\[ \sum_{i=1}^n (y_i - \bar{y})^2 = \sum_{i=1}^n (y_i - \hat{y}_i)^2 + \sum_{i=1}^n (\hat{y}_i - \bar{y})^2 \]

これより、

\[ \begin{aligned} \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (y_i - \bar{y})^2 &= \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (y_i - \hat{y}_i)^2 + \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (\hat{y}_i - \bar{y})^2 \\ s_y^2 &= s_e^2 + s_{\hat{y}}^2 \end{aligned} \]

となる。また、\(s_{\hat{y}}^2\)は

\[ \begin{aligned} s_{\hat{y}}^2 &= \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n (\hat{y}_i - \bar{y})^2 \\ &= \frac{1}{n}\sum_{i=1}^n \{a+b x_i - (a+b\bar{x}) \}^2 = b^2 s_x^2 \end{aligned} \]

と表せる。これらと与えられた残差分散を用いると、

\[ \begin{aligned} s_y^2 &=s_{\hat y}^2+s_e^2 \\ &=b^2s_x^2+s_e^2 \\ &=0.6^2\times0.9+0.972 \\ &=1.296 \end{aligned} \]

となる。したがって、逆回帰の傾きは男女とも

\[ d=\frac{0.54}{1.296}=0.416666\ldots=\frac{5}{12} \]

である。

一般的に回帰直線は\((\bar y,\bar x)\)を通るので、男性の切片は

\[ c_M=7.0-\frac{5}{12}\times8.4=3.5 \]

であり、女性の切片は

\[ c_F=6.0-\frac{5}{12}\times7.2=3.0 \]

である。よって、男女の回帰式は

\[ \text{男性:}\quad \hat x_M=3.5+\frac{5}{12}y \]

および

\[ \text{女性:}\quad \hat x_F=3.0+\frac{5}{12}y \]

となる。

\(y=7.2\)千円のとき、男性では

\[ \hat x_M=3.5+\frac{5}{12}\times7.2=6.5 \]

時間、女性では

\[ \hat x_F=3.0+\frac{5}{12}\times7.2=6.0 \]

時間となる。したがって、同じ7.2千円の賃金を得ている人々については、男性の平均労働時間の予測値が女性より0.5時間長く、男女間に差が見られる。

[4]

同一労働時間で比較した[1]では、男性の平均賃金の予測値が女性より0.6千円高い。一方、[2]の平均賃金を平均労働時間で割った値は、男女とも1.2千円/時間であり差がない。また、同一賃金で比較した[3]では、男性の平均労働時間の予測値が女性より0.5時間長い。

このように、同じデータでも、労働時間を一定にした条件付き平均、平均賃金と平均労働時間の比、賃金を一定にした条件付き平均では、比較している量が異なる。したがって、どの量を比較するかによって、男女間に差が見られるかどうかの結論は異なる。