【統計検定1級】統計応用・人文科学 2025年 問3【解答】

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解答

[1]

標準化したブランド、接客、品揃え、味、価格を順に\(X_1\), \(X_2\), \(X_3\), \(X_4\), \(X_5\)とし、共通因子を\(f_1\), \(f_2\)、独自因子を\(\varepsilon_i\)とする。 因子分析では、各観測変数を複数の変数に共通する因子の部分と、その変数だけに対応する独自因子の部分に分ける。 因子負荷量を\(\lambda_{i1}\), \(\lambda_{i2}\)とすると、2因子モデルは

\[ \boldsymbol{X}=\Lambda\boldsymbol{f}+\boldsymbol{\varepsilon} \]

と表される。 ここで\(\boldsymbol{X}=(X_1,\ldots,X_5)^T\), \(\boldsymbol{f}=(f_1,f_2)^T\), \(\boldsymbol{\varepsilon}=(\varepsilon_1,\ldots,\varepsilon_5)^T\)であり、\(\Lambda=(\lambda_{ij})\)は\(5\times2\)の因子負荷行列である。 成分ごとに書くと

\[ X_i=\lambda_{i1}f_1+\lambda_{i2}f_2+\varepsilon_i \qquad (i=1,\ldots,5) \]

となる。 ここで\(\operatorname{Var}(X_i)=\operatorname{Var}(f_1)=\operatorname{Var}(f_2)=1\)とする。 独自因子は共通因子と無相関であり、異なる観測変数に対応する独自因子同士も無相関とする。

共通部分が説明する分散を共通性\(h_i^2\)、独自因子の標準偏差を\(\psi_i\)とし、その分散である独自性を\(\psi_i^2=\operatorname{Var}(\varepsilon_i)\)と書くと、

\[ \begin{aligned} \operatorname{Var}(X_i) &=\operatorname{Var}(\lambda_{i1}f_1+\lambda_{i2}f_2)+\operatorname{Var}(\varepsilon_i) \\ &=h_i^2+\psi_i^2=1 \end{aligned} \]

である。 表1では共通因子も互いに無相関であるから、

\[ \begin{aligned} h_i^2 &=\operatorname{Var}(\lambda_{i1}f_1+\lambda_{i2}f_2) \\ &=\lambda_{i1}^2\operatorname{Var}(f_1)+\lambda_{i2}^2\operatorname{Var}(f_2) +2\lambda_{i1}\lambda_{i2}\operatorname{Cov}(f_1,f_2) \\ &=\lambda_{i1}^2+\lambda_{i2}^2 \end{aligned} \]

となり、共通性は因子負荷量の二乗和である。 したがって、ブランドの共通性は

\[ (A)=0.80^2+0.40^2=0.80 \]

となる。

接客と因子1の共分散は、

\[ \begin{aligned} \operatorname{Cov}(X_2,f_1) &=\operatorname{Cov}(\lambda_{21}f_1+\lambda_{22}f_2+\varepsilon_2,f_1) \\ &=\lambda_{21}\operatorname{Var}(f_1) \\ &=0.40 \end{aligned} \]

である。 両者の分散が\(1\)なので、相関係数は

\[ \operatorname{Cor}(X_2,f_1) =\frac{\operatorname{Cov}(X_2,f_1)}{\sqrt{\operatorname{Var}(X_2)} \sqrt{\operatorname{Var}(f_1)}} =0.40 \]

となる。

接客と品揃えの相関係数も両者の共分散に等しい。 共通因子間、共通因子と独自因子の間、および独自因子同士が無相関であることを用いると、

\[ \begin{aligned} \operatorname{Cor}(X_2,X_3) &=\frac{\operatorname{Cov}(X_2,X_3)}{\sqrt{\operatorname{Var}(X_2)} \sqrt{\operatorname{Var}(X_3)}} \\ &=\operatorname{Cov}(\lambda_{21}f_1+\lambda_{22}f_2+\varepsilon_2,\lambda_{31}f_1+\lambda_{32}f_2+\varepsilon_3) \\ &=\lambda_{21}\lambda_{31}\operatorname{Var}(f_1)+\lambda_{22}\lambda_{32}\operatorname{Var}(f_2) \\ &=\lambda_{21}\lambda_{31}+\lambda_{22}\lambda_{32} \\ &=0.40 \times 0.90 + 0.50 \times 0.10 \\ &=0.41 \end{aligned} \]

となる。

[2]

表1では各観測変数の共通部分が、無相関な2つの成分\(\lambda_{i1}f_1\), \(\lambda_{i2}f_2\)からなる。 因子\(j\)による成分の分散は

\[ \operatorname{Var}(\lambda_{ij}f_j) =\lambda_{ij}^2\operatorname{Var}(f_j) =\lambda_{ij}^2 \]

である。 この分散を5変数について足したものが因子\(j\)の寄与なので、因子ごとの寄与は、その因子の負荷量の二乗和となる。 表1から、因子1と因子2の寄与はそれぞれ

\[ \begin{aligned} \sum_{i=1}^{5}\lambda_{i1}^2 &=0.80^2 + 0.40^2 + 0.90^2 + 0.90^2 + 0.70^2 \\ &=2.91 \\ \sum_{i=1}^{5}\lambda_{i2}^2 &=0.40^2 + 0.50^2 + 0.10^2 + (-0.20)^2 + (-0.50)^2 \\ &=0.71 \end{aligned} \]

である。 標準化した5変数の分散の和は\(5\)なので、寄与率は

\[ \text{因子1の寄与率:}\frac{2.91}{5}=0.582, \qquad \text{因子2の寄与率:}\frac{0.71}{5}=0.142 \]

となる。

一般に、\(p\)個の観測変数を扱い、共通因子が互いに無相関で分散\(1\)である場合、因子\(j\)の寄与率は

\[ \text{因子$j$の寄与率} =\frac{\sum_{i=1}^{p}\lambda_{ij}^2}{\sum_{i=1}^{p}\operatorname{Var}(X_i)} \]

である。 ここで\(\lambda_{ij}\)は観測変数\(X_i\)に対する因子\(f_j\)の負荷量であり、\(\lambda_{ij}^2\)は因子\(j\)が\(X_i\)について説明する分散である。 \(i\)は観測変数、\(j\)は因子の番号を表す。 観測変数も分散\(1\)に標準化している場合は、分母が\(p\)なので

\[ \text{因子$j$の寄与率} =\frac{\sum_{i=1}^{p}\lambda_{ij}^2}{p} \]

となる。 共通性\(h_i^2\)は各変数について全因子の寄与を足した量であり、各因子について全変数の寄与を足す上の分子とは、和を取る方向が異なる。

[3]

直交回転は、無相関な共通因子の座標軸を直交行列\(Q\)で回転し、同じ共通部分を新しい因子と負荷量で表す操作である。 回転後の因子と負荷行列を\(\boldsymbol{f}^{*}=Q^T\boldsymbol{f}\), \(\Lambda^{*}=\Lambda Q\)とすると、\(QQ^T=Q^TQ=I_2\)より

\[ \Lambda^{*}\boldsymbol{f}^{*} =\Lambda QQ^T\boldsymbol{f} =\Lambda\boldsymbol{f} \]

であり、モデルの共通部分は変わらない。 表1では\(\operatorname{Cov}(\boldsymbol{f})=I_2\)なので、回転後も

\[ \operatorname{Cov}(\boldsymbol{f}^{*})=Q^TI_2Q=I_2 \]

となり、因子の分散\(1\)と因子間の無相関が保たれる。 また、

\[ \Lambda^{*}(\Lambda^{*})^T =\Lambda QQ^T\Lambda^T =\Lambda\Lambda^T \]

より、共通部分の分散共分散行列も変わらない。 その対角成分は共通性、非対角成分は異なる観測変数の共分散に当たるので、共通性と観測変数どうしの相関係数は保存される。

ここで保存される相関係数は、符号も含めて変わらない。 例えば因子2の軸を逆向きに取ると、その因子と観測変数の相関係数、および因子2の負荷量の列全体は符号を反転する。 しかし、各2変数の負荷量の積は\((-\lambda_{i2})(-\lambda_{j2})=\lambda_{i2}\lambda_{j2}\)と変わらないので、観測変数どうしの相関係数は変わらない。 なお、一般の直交回転では、観測変数と各因子の相関係数は絶対値も保存されるとは限らない。

表2のブランドについて共通性の保存を用いると、

\[ \begin{aligned} 0.40^2+(B)^2 &=(A) \\ (B)^2 &=0.80-0.40^2=0.64 \\ (B) &=\pm 0.80 \end{aligned} \]

となる。 この条件だけでは符号は決まらない。 ブランドと接客の相関係数を表1のモデルで計算すると、両者の分散が\(1\)であることから

\[ \begin{aligned} \operatorname{Cor}(X_1,X_2) &=\frac{\operatorname{Cov}(X_1,X_2)}{\sqrt{\operatorname{Var}(X_1)} \sqrt{\operatorname{Var}(X_2)}} \\ &=\operatorname{Cov}(\lambda_{11}f_1+\lambda_{12}f_2+\varepsilon_1,\lambda_{21}f_1+\lambda_{22}f_2+\varepsilon_2) \\ &=\lambda_{11}\lambda_{21}\operatorname{Var}(f_1)+\lambda_{12}\lambda_{22}\operatorname{Var}(f_2) \\ &=\lambda_{11}\lambda_{21}+\lambda_{12}\lambda_{22} \\ &=0.80 \times 0.40 + 0.40 \times 0.50 \\ &=0.52 \end{aligned} \]

となる。 表2では、回転後の因子\(f_1^*\), \(f_2^*\)と負荷量\(\lambda_{ij}^*\)を用いると、同様に

\[ \begin{aligned} \operatorname{Cor}(X_1,X_2) &=\frac{\operatorname{Cov}(X_1,X_2)}{\sqrt{\operatorname{Var}(X_1)} \sqrt{\operatorname{Var}(X_2)}} \\ &=\operatorname{Cov}(\lambda_{11}^*f_1^*+\lambda_{12}^*f_2^*+\varepsilon_1,\lambda_{21}^*f_1^*+\lambda_{22}^*f_2^*+\varepsilon_2) \\ &=\lambda_{11}^*\lambda_{21}^*\operatorname{Var}(f_1^*)+\lambda_{12}^*\lambda_{22}^*\operatorname{Var}(f_2^*) \\ &=\lambda_{11}^*\lambda_{21}^*+\lambda_{12}^*\lambda_{22}^* \\ &=0.40 \times 0.02 + (B) \times 0.64 \end{aligned} \]

となる。 観測変数どうしの相関係数が保存されることから、

\[ \begin{aligned} 0.40 \times 0.02 + (B) \times 0.64 &=0.52 \\ (B) &=\frac{0.52-0.40 \times 0.02}{0.64} \\ &=0.80 \end{aligned} \]

となり、表2の他の負荷量の符号が指定されているため、その掲載値に合わせると符号は正に定まる。 因子2の軸を逆向きに取るなら、\((B)\)だけでなく、同じ列の他の負荷量の符号もすべて反転させる必要がある。

[4]

斜交回転では、共通因子の座標軸が直交するという条件を外し、因子間の相関を許して同じ共通部分を表す。 可逆な行列\(T\)を用いて\(\Lambda^{*}=\Lambda T\), \(\boldsymbol{f}^{*}=T^{-1}\boldsymbol{f}\)とすると、

\[ \Lambda^{*}\boldsymbol{f}^{*} =\Lambda TT^{-1}\boldsymbol{f} =\Lambda\boldsymbol{f} \]

である。 共通部分自体が変わらないので、その分散である共通性も、独自因子の分散である独自性も保存される。 ただし、回転後の因子は無相関とは限らないため、共通性を負荷量の二乗和だけで計算することはできない。

以下では表3の回転後の標準化因子を\(f_1\), \(f_2\)と書き、その相関を\(\phi=\operatorname{Cor}(f_1,f_2)\)とする。 因子の分散がともに\(1\)なので、分散共分散行列は

\[ \Phi=\operatorname{Cov}(\boldsymbol{f})= \begin{pmatrix} 1 & \phi \\ \phi & 1 \end{pmatrix} \]

である。 表3の負荷量を用いると、共通性は

\[ \begin{aligned} h_i^2 &=\operatorname{Var}(\lambda_{i1}f_1+\lambda_{i2}f_2) \\ &=\lambda_{i1}^2\operatorname{Var}(f_1)+\lambda_{i2}^2\operatorname{Var}(f_2) +2\lambda_{i1}\lambda_{i2}\operatorname{Cov}(f_1,f_2) \\ &=\lambda_{i1}^2+\lambda_{i2}^2+2\lambda_{i1}\lambda_{i2}\phi \end{aligned} \]

となる。 品揃えの掲載値を代入すると

\[ 0.82=0.66^2+0.410^2+2 \times 0.66 \times 0.410 \times \phi \]

となるから、

\[ \begin{aligned} \phi &=\frac{0.82-0.66^2-0.410^2}{2 \times 0.66 \times 0.410} \\ &=\frac{0.2163}{0.5412} \\ &\approx 0.3997 \end{aligned} \]

を得る。 したがって、因子1と因子2の間の相関係数は約\(0.40\)である。

[5]

独自因子の分散は\(\psi_i^2=\operatorname{Var}(\varepsilon_i)\)であり、[1]の分散の分解\(1=h_i^2+\psi_i^2\)から

\[ \psi_i^2=1-h_i^2 \]

である。 表3の共通性から、ブランド、接客、品揃え、味、価格の順に

\[ \begin{aligned} \psi_1^2&=1-0.80=0.20 \\ \psi_2^2&=1-0.41=0.59 \\ \psi_3^2&=1-0.82=0.18 \\ \psi_4^2&=1-0.85=0.15 \\ \psi_5^2&=1-0.74=0.26 \end{aligned} \]

となる。

因子負荷量には表3の掲載値を、独自因子の分散には上で求めた値を用い、[4]の因子間相関を小数第2位までに丸めると、パス図は次のようになる。 独自因子から観測変数への係数は\(1\)に固定している。

表3に基づく2因子モデルのパス図。共通因子間相関は約0.40。各因子負荷量と独自因子の分散を示す。

図1: 因子分析のパス図

楕円、長方形、円はそれぞれ共通因子、観測変数、独自因子を表す。 共通因子からの矢印の数値は因子負荷量、双方向の矢印の数値は因子間相関、各独自因子の下の数値はその分散である。 特に、因子2から価格への負荷量は表3の\(0.001\)である。

補足:表1・表2と表3の整合性について

以下は表全体の整合性に関する補足であり、各小問への解答には影響しない。 行と列の順序は、いずれもブランド、接客、品揃え、味、価格とする。 表\(k\)の因子負荷行列を\(\Lambda_k\)、共通因子の分散共分散行列を\(\Phi_k\)とすると、観測変数の分散共分散行列は

\[ \Sigma_k=\Lambda_k\Phi_k\Lambda_k^T+\Psi \]

である。 独自因子の分散共分散行列は、[5]より

\[ \Psi=\operatorname{diag}(0.20,0.59,0.18,0.15,0.26) \]

となる。

表1と表2では共通因子が無相関で分散\(1\)なので、\(\Phi_1=\Phi_2=I_2\)である。 掲載値から求めた\(\Sigma_1\), \(\Sigma_2\)の対角成分はすべて\(1\)となり、相関行列はそれぞれ\(R_1=\Sigma_1\), \(R_2=\Sigma_2\)である。 計算すると両者は一致し、

\[ R_1=R_2= \begin{pmatrix} 1.00 & 0.52 & 0.76 & 0.64 & 0.36\\ 0.52 & 1.00 & 0.41 & 0.26 & 0.03\\ 0.76 & 0.41 & 1.00 & 0.79 & 0.58\\ 0.64 & 0.26 & 0.79 & 1.00 & 0.73\\ 0.36 & 0.03 & 0.58 & 0.73 & 1.00 \end{pmatrix} \]

となる。

表3では、[4]の丸め前の計算値を用いて

\[ \Phi_3= \begin{pmatrix} 1 & \phi\\ \phi & 1 \end{pmatrix}, \qquad \phi=\frac{0.2163}{0.5412} \]

とする。 掲載値の丸めにより\(\Sigma_3\)の対角成分には厳密に\(1\)とならないものがあるので、各成分を、対応する2変数の標準偏差の積で割って相関行列\(R_3=(r_{ij}^{(3)})\)を求める。 \(\Sigma_3=(\sigma_{ij}^{(3)})\)と書くと、

\[ r_{ij}^{(3)} =\frac{\sigma_{ij}^{(3)}}{\sqrt{\sigma_{ii}^{(3)}}\sqrt{\sigma_{jj}^{(3)}}} \]

であり、小数第4位まで示すと

\[ R_3\approx \begin{pmatrix} 1.0000 & 0.5289 & 0.7715 & 0.6958 & 0.5702\\ 0.5289 & 1.0000 & 0.4423 & 0.3385 & 0.2350\\ 0.7715 & 0.4423 & 1.0000 & 0.8074 & 0.7091\\ 0.6958 & 0.3385 & 0.8074 & 1.0000 & 0.7817\\ 0.5702 & 0.2350 & 0.7091 & 0.7817 & 1.0000 \end{pmatrix} \]

となる。

二つの行列を比べると、対角成分を除く全10組の相関係数が異なることがわかる。

同じモデルの因子を回転して表現を変えるだけなら、観測変数の相関行列は変わらない。 したがって、\(R_1=R_2\)に対して\(R_3\)が一致しないことから、表3を表1・表2と同じモデルの斜交回転後の結果とみなすと整合しない点が出てくる。 ただし、これは表全体の整合性に関する問題であり、各小問への解答には影響しない。