【統計検定1級】統計応用・人文科学 2025年 問5【解答】

本記事は、筆者が独自に作成した解答・解説です。

統計検定の問題は、当サイトでは掲載していません。

  • 本記事は、統計検定の公式の解答・解説ではありません。
  • 内容の正確性には配慮していますが、誤りが含まれている場合があります。
  • 統計検定®は一般財団法人統計質保証推進協会の登録商標です。

解答

[1]

年収が\(500\)万円以上である事象を\(H\)、YESと答える事象を\(Y\)とする。 YESと答える確率を\(\theta\)とおくと、全確率の公式より

\[ \begin{aligned} \theta &=P(Y\,|\,H)P(H)+P(Y\,|\,H^c)P(H^c) \\ &=(1-h_1)\pi+h_2(1-\pi) \\ &=0.2+0.7\pi \end{aligned} \]

となる。 YESと答える人数を確率変数\(M\)とし、その観測値を\(m\)とする。 各回答を独立な試行として扱うと\(M\sim\operatorname{Bin}(n,\theta)\)であり、推定量\(\tilde{\pi}=M/n\)の期待値と分散は

\[ \begin{aligned} \operatorname{E}[\tilde{\pi}] &=\frac{\operatorname{E}[M]}{n} =\frac{n\theta}{n} =0.2+0.7\pi \\ \operatorname{Var}(\tilde{\pi}) &=\frac{\operatorname{Var}(M)}{n^2} =\frac{\theta(1-\theta)}{n} \\ &=\frac{(0.2+0.7\pi)(0.8-0.7\pi)}{n} \end{aligned} \]

である。

[2]

\(0\leq\pi\leq1\)より、YESの確率\(\theta=0.2+0.7\pi\)は\(0.2\leq\theta\leq0.9\)をみたす。 観測値\(m\)に対する尤度は

\[ L(\pi)={}_{n}C_m\theta^m(1-\theta)^{n-m} \]

である。 \(\pi\)に依存しない項を除いた対数尤度を

\[ \ell(\pi)=m\log\theta+(n-m)\log(1-\theta) \]

とおくと、

\[ \begin{aligned} \ell'(\pi) &=0.7\left\{\frac{m}{\theta}-\frac{n-m}{1-\theta}\right\} \\ &=\frac{0.7(m-n\theta)}{\theta(1-\theta)} \end{aligned} \]

となる。 分母は正なので、尤度は\(\theta<m/n\)で増加し、\(\theta>m/n\)で減少する。 したがって、\(m/n\)が\([0.2,0.9]\)内にあれば\(\theta=m/n\)、区間外にあれば近い方の端点で最大となり、最尤推定量は

\[ \hat{\pi}= \begin{cases} 0 & (m<0.2n)\\ \dfrac{m-0.2n}{0.7n} & (0.2n\leq m\leq0.9n)\\ 1 & (m>0.9n) \end{cases} \]

である。

[3]

質問の選択は年収と独立であり、回答者は正直に答える。 YESとなるのは、年収が\(500\)万円以上で質問Aを選ぶ場合か、年収が\(500\)万円未満で質問Bを選ぶ場合である。 これらは互いに排反なので、求める確率は

\[ P(Y)=\frac{2}{3}\pi+\frac{1}{3}(1-\pi)=\frac{1+\pi}{3} \]

である。

[4]

YESの確率を\(q=(1+\pi)/3\)とおくと、\(0\leq\pi\leq1\)より\(1/3\leq q\leq2/3\)である。 独立な回答におけるYESの人数を\(T\)とすると\(T\sim\operatorname{Bin}(n,q)\)であり、観測値\(t\)に対する尤度は

\[ L(\pi)={}_{n}C_t\left(\frac{1+\pi}{3}\right)^t\left(\frac{2-\pi}{3}\right)^{n-t} \]

となる。 \(\pi\)に依存しない項を除いた対数尤度は

\[ \ell(\pi)=t\log(1+\pi)+(n-t)\log(2-\pi) \]

であり、その導関数は

\[ \begin{aligned} \ell'(\pi) &=\frac{t}{1+\pi}-\frac{n-t}{2-\pi} \\ &=\frac{3t-n-n\pi}{(1+\pi)(2-\pi)} \end{aligned} \]

となる。 分母は\(0\leq\pi\leq1\)で正なので、尤度は\(\pi<3t/n-1\)で増加し、\(\pi>3t/n-1\)で減少する。 この小問の最尤推定量\(\breve{\pi}\)は、\(3t/n-1\)が\([0,1]\)内にあればその値、区間外にあれば近い方の端点となるから、

\[ \breve{\pi}= \begin{cases} 0 & (t<n/3)\\ \dfrac{3t}{n}-1 & (n/3\leq t\leq2n/3)\\ 1 & (t>2n/3) \end{cases} \]

である。

[5]

一般の\(p\)に対して、YESと答える確率は

\[ q_p=p\pi+(1-p)(1-\pi)=(1-p)+(2p-1)\pi \]

となる。 \(p=1/2\)では\(q_p=1/2\)となって\(\pi\)に依存しないため、回答から\(\pi\)を推定できない。 また、\(p=0\)または\(p=1\)では質問の選択にランダム性がなく、回答から年収のカテゴリーが分かる。 したがって、プライバシーを保護しつつ\(\pi\)を推定するには\(0<p<1\)かつ\(p\ne1/2\)とする。

推定精度を見るため、YESの人数\(T\sim\operatorname{Bin}(n,q_p)\)から、\([0,1]\)への切り詰めを行わない線形推定量

\[ U_p=\frac{T/n-(1-p)}{2p-1} \]

を考える。 その分散は

\[ \operatorname{Var}(U_p)=\frac{q_p(1-q_p)}{n(2p-1)^2} \]

であり、

\[ q_p(1-q_p)=p(1-p)+(2p-1)^2\pi(1-\pi) \]

より、

\[ \operatorname{Var}(U_p)=\frac{\pi(1-\pi)}{n}+\frac{p(1-p)}{n(2p-1)^2} \]

となる。 第2項は\(p\)が\(1/2\)に近づくほど大きく、\(0\)または\(1\)に近づくほど小さいので、推定精度の面では\(p\)を\(1/2\)から離す方がよい。 一方、年収が\(500\)万円以上の人と未満の人のYESの確率はそれぞれ\(p\), \(1-p\)であり、\(p\)が\(1/2\)に近いほど両者の回答を区別しにくくなる。 そのためプライバシーの保護には有利となり、正直な回答を得やすいと考えられる。 \(p\)は推定精度とプライバシーの保護・回答の正直さとの兼ね合いで選ぶべきであり、この設定だけから一意の最適値は決まらない。